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卒論の準備を進めるうちに、『もう少しこのテーマを続けたい』と思い始めた。でも、文学部から大学院に行くと、その先どうなるのかが見えなくて不安ですよね。
結論から言うと、文学部の大学院進学は「いつ何を決めるか」を時間軸で並べると、ぐっと考えやすくなります。いちばん大事なのは、研究室と指導教員を早めに見ておくことです。
この記事では、文学部に在学中の学生に向けて、院進の流れと研究室の選び方を紹介します。
文学部から大学院へ進む人はどれくらい?
文学部系の学科から大学院へ進む人は、卒業者の中では少数派です。だからこそ「なんとなく」ではなく、続けたい問いと進む研究室をはっきりさせてから決めるのがおすすめです。
『周りに院進する人がいなくて、相談しにくい』という方も多いはずです。
実際の数字を見てみましょう。文部科学省の学校基本調査(令和7年度・令和7年3月卒業者)の人数から、進学者の割合を計算しました。
| 学科の分類 | 卒業者 | 進学者 | 進学者の割合(計算値) |
|---|---|---|---|
| 大学(学部)全体 | 584,304人 | 70,226人 | 12.0% |
| 人文科学 計 | 81,577人 | 3,746人 | 4.6% |
| うち文学 | 30,861人 | 815人 | 2.6% |
| うち史学 | 5,727人 | 337人 | 5.9% |
| うち哲学 | 10,761人 | 944人 | 8.8% |
「進学者」は大学院などへ進学した人の数です。この表の「人文科学」は学科の分類で、「文学部」という学部の数ではありません。割合は公表値ではなく、表の人数から計算した値です。
同じ人文系でも、哲学や史学の分類は進学者の割合が少し高めです。研究を続けたい気持ちが、分野によって形になりやすい違いがあるのかもしれません。
院進は「珍しいこと」ではなく「選ぶ人が少ない道」
少数派と聞くと、不安になりますよね。
ただ、少ないのは「その道を選ぶ人」であって、道そのものが閉じているわけではありません。どの研究室にも、毎年学部から進んでくる学生がいます。
大事なのは、人数の多さより「自分が何を続けたいか」です。
大学院には、修士課程と博士課程(博士後期課程)があります。この記事では、文学部の学部生が最初に進む修士課程と、その先の博士課程を分けて紹介します。課程の呼び方や年限は大学によって違うので、志望先の募集要項で確かめてください。
文学部の大学院では何を研究するの?
文学部の大学院では、学部の卒論で扱ったような問いを、もっと長い時間と深い資料で掘り下げます。文学・歴史・哲学・言語・心理・社会など、学部の専攻とつながる分野ごとに研究室が分かれているのが一般的です。
『大学院って、学部の授業がもっと難しくなるだけ?』と思っている方もいますよね。
実は、いちばん大きな違いは「授業を受ける」から「自分の研究を進める」へ中心が移ることです。ゼミでの発表と、指導教員との相談が学びの中心になります。
京都大学の文学研究科を例に見てみる
京都大学の文学部・大学院を例にすると、イメージがつかみやすくなります。
京都大学の大学院文学研究科には、文献文化学・思想文化学・歴史文化学・行動文化学・現代文化学の各専攻があります(2026年10月時点の公式サイト)。修士課程では、ハイデルベルク大学との国際連携の専攻(ジョイント・ディグリー)も加わります。
在籍者は、修士課程に約250名、博士後期課程に約200名と紹介されています(同)。京大文学部の大学院は、学部の約30の専修とつながる形で研究の場が広がっているんです。
| 京大の大学院文学研究科の専攻 | 学部の系とのつながりの例 |
|---|---|
| 文献文化学 | 国語学国文学・中国語学中国文学など、言葉と文献を読む専修 |
| 思想文化学 | 哲学・倫理学・宗教学など、考え方そのものを問う専修 |
| 歴史文化学 | 日本史学・東洋史学・西洋史学・考古学など |
| 行動文化学 | 心理学・言語学・社会学・地理学など |
| 現代文化学 | 科学哲学科学史・メディア文化学・現代史学など |
右の列は、学部の専修名と大学院の専攻名から編集部が対応させた目安です。実際の受け入れの範囲は、公式の募集要項で確かめてください。
他の大学の文学部の大学院は?
大学院の名前は、大学によって違います。
「文学研究科」と呼ぶ大学もあれば、名古屋大学のように「人文学研究科」と呼ぶ大学もあります。学部の名前だけで探すと見落とすことがあるので、志望する分野の名前で探してみてください。
国立の旧帝大の文学部と大学院のつながりは、旧帝大の文学部|京大・北大・東北大・名大・阪大・九大の特徴でも紹介しています。
院進の流れを時間軸で並べると
文学部の院進は、学部3年で「方向を決める」、4年で「受験と卒論を両立する」、修士で「研究の形を作る」、博士で「研究者として独り立ちする」という流れです。今どこにいるかを確かめながら読んでみてください。
『いつまでに何をすればいいか分からない』というのが、院進でいちばん多い悩みですよね。
そこで、学部3年から博士課程までを、やることの順に並べてみました。具体的な時期は大学ごとに違うので、目安として使ってください。
| 段階 | 主にやること | この時期の分かれ道 |
|---|---|---|
| 学部3年 | ゼミで発表を重ね、続けたい問いを探す | 院進か就職かの方向を考え始める |
| 学部3年の終わりごろ | 志望する研究室の先生に相談し、募集要項を集める | 自分の大学の大学院か、他大学か |
| 学部4年 | 大学院入試の準備と卒論を並行して進める | 卒論のテーマを修士の研究につなげるか |
| 修士課程 | 授業と演習を受けながら修士論文を書く | 博士課程に進むか、就職するか |
| 博士課程 | 学会発表や論文の投稿を重ね、博士論文をまとめる | 研究職をめざすか、別の道に活かすか |

学部3年:続けたい問いを見つける
院進を考え始めるなら、学部3年のゼミが出発点です。
ゼミの発表で「ここはもっと調べたい」と思えた問いがあれば、それが研究の種になります。逆に、問いが見つからないうちに院進だけ決めると、入ってから苦労することも。
例えば、こんなふうに自分に聞いてみてください。
「この問い、卒論で終わらせたら物足りない?」
「物足りない。まだ読んでいない資料がたくさんある」
こう答えられるなら、院進を本気で考えていい時期です。
学部4年:入試と卒論を両立する
学部4年は、大学院入試と卒論が重なるいちばん忙しい時期です。
文学部の大学院入試では、外国語の試験や専門分野の筆記、研究計画書、面接(口述試験)が組み合わされることが多いです。内容と日程は大学院ごとに違うので、早めに募集要項を手に入れておきましょう。
卒論の進め方は、文学部の卒論|テーマの決め方・文字数・書き方で時間軸に沿って紹介しています。卒論を修士の研究につなげるつもりで書くと、研究計画書も書きやすくなりますよ。
- 志望する大学院の募集要項と試験の日程
- 外国語の試験で求められる言語
- 研究計画書の分量と書き方の指定
- 指導を受けたい先生が、受け入れをしているか
- 学内の推薦や内部の選考の仕組みがあるか
修士課程:研究の形を作る
修士課程では、授業と演習を受けながら、修士論文に向けて研究を進めます。
学部の卒論より扱う資料が増え、先行研究との違いをはっきり示すことが求められます。自分の研究が「どこが新しいのか」を言えるようになるのが、この時期の目標です。
博士課程:研究者として独り立ちする
文学部系の博士課程では、学会での発表や、学術誌への論文の投稿を重ねながら博士論文をまとめます。
博士号(博士の学位)を取るまでの道のりは、分野や研究の進み具合で大きく違います。指導教員と相談しながら、自分のペースを作っていくことになります。
「就職活動がうまくいかなかったから、とりあえず院進」という決め方。目的があいまいなまま進むと、修士論文のテーマ決めで立ち止まりがちです。院進するなら、続けたい問いを一つ言葉にしてからにしましょう。
研究室と指導教員の選び方
文学部の大学院選びは、大学名より「誰に、どんな環境で指導を受けるか」で決まります。研究室の先生の専門と、指導の受け方の2つを中心に見てみてください。
『研究室って、何を見て選べばいいの?』と迷いますよね。
理系の研究室と違い、文学部の研究室は、先生の専門分野ごとのまとまりという意味で使われることが多いです。文学部の教授や准教授が、それぞれ自分の分野で院生を指導します。
研究室選びのチェック表
研究室と指導教員を選ぶ時のポイントを、チェック表にまとめました。
| 見るところ | 確かめたいこと | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 先生の専門 | 自分の問いに近い時代・地域・作品・テーマを扱っているか | 先生の論文や著書の題名を読む |
| 受け入れ状況 | 来年度、院生の受け入れをしているか | 研究室のページや大学院の案内を見る |
| 指導の受け方 | 個別の面談が多いか、ゼミ中心か | 先生に直接相談する |
| 院生の様子 | 先輩の院生がどんな研究をしているか | 研究室の発表会や院生の論文を見る |
| 資料の環境 | 必要な文献や史料が図書館にそろっているか | 大学図書館の蔵書を検索する |
| 外国語 | 研究に必要な言語を学べる授業があるか | 大学院の授業一覧を見る |

この中で特に大事なのが、先生の専門です。
先生の研究の題名を読んで、「自分の問いの話ができそう」と思えるかどうか。ここが合っていれば、多少の違いは研究の中で埋めていけます。
先生に相談する時の聞き方
志望する研究室の先生には、受験の前に相談しておくのが一般的です。
『いきなり連絡したら迷惑かも』と思う方もいますよね。ただ、多くの先生は、研究したいことがはっきりしている学生の相談を歓迎してくれます。
例えば、こんな聞き方です。
「卒論で〇〇の場面の語りを扱っています。修士ではこれを作品全体に広げたいのですが、先生の研究室で扱えるテーマでしょうか」
自分の問いを一文で伝えられるよう、相談の前にまとめておきましょう。
他大学の大学院を受ける場合、先生への事前相談の仕方は大学院ごとに案内があることがあります。募集要項や研究科のページに「事前に指導予定教員に連絡すること」などの記載がないか確かめてください。
院進と就職はどう考える?
院進するとその先は研究者しかない、というわけではありません。ただ、修士でいったん就職するか、博士まで進むかで、準備の仕方が変わります。どこで分かれ道があるかを先に知っておくと安心です。
『大学院に行ったら就職できなくなるのでは』という心配は、とてもよく聞きます。
ここでは、修士で就職する場合と、博士課程に進む場合に分けて見てみます。
- 学部と同じように民間企業の就職活動ができる
- 研究で身につけた調べる力・書く力を説明しやすい
- 修士の研究をしながら就職活動の時期を作る必要がある
- 研究に打ち込める時間が長くなる
- 大学の研究職をめざす人が多い道になる
- 民間企業へ進むなら、早めに情報を集めておきたい
公務員や教員をめざす場合
院進した後に、公務員や教員をめざす人もいます。
国家公務員総合職の院卒者試験には「人文」という区分はありませんが、「行政」区分の中に人文系の選択科目があります(人事院・2026年度受験案内)。大卒程度試験には「政治・国際・人文」区分があり、受験資格に学部の指定はありません。
教員をめざす場合、中学・高校の専修免許状は、修士の学位と所定の単位が基礎資格になります(教育職員免許法 別表第一)。文学部で取れる資格の全体像は、文学部で取れる資格|教員免許・学芸員・司書で紹介しています。
学部卒で就職する道と比べる
学部で卒業して就職する道と比べたい方は、文学部の主な就職先も見ておくと判断しやすくなります。
文学部の卒業後の進路の全体像は、文学部の就職先|どんな仕事につく?卒業後の進路で紹介しています。
院進か就職かで迷っている時は、どちらの道も一度ちゃんと調べてから決めるのがおすすめです。
院進を決める前のセルフチェック
迷っている時は、気持ちと準備の両方を確かめてみてください。全部に当てはまらなくても大丈夫です。
『院進したい気持ちはあるけど、自分に向いているのか分からない』という方もいますよね。
次のチェックで、今の自分の状況を確かめてみましょう。
- 卒論のテーマで、まだ調べたいことがはっきりある
- 自分の問いを一文で人に説明できる
- 話を聞いてみたい先生が一人以上いる
- 研究に必要な外国語の準備を始めている
- 修士の後の進路について、いくつか案がある
- 家族と、院進の時間やお金の見通しを話し合った
最後の項目は、意外と後回しにされがちです。大学院の学費や奨学金の仕組みは大学ごとに違うので、志望先の案内で早めに確かめておきましょう。
チェックで足りないところが見えたら、次の順に動いてみてください。
- 卒論の指導教員に、院進を考えていることを伝える
- 志望する大学院の募集要項と過去の試験の案内を集める
- 志望する研究室の先生の論文を読み、相談の準備をする
- 外国語と専門分野の試験に向けて、勉強の計画を立てる
- 研究計画書の下書きを作り、ゼミの先生に見てもらう
これから文学部を考える家族や後輩がいたら、どの大学にどんな専攻や研究の場があるのか、学部の段階から資料で比べておくと選びやすくなります。
進学情報サイト
気になる大学の資料を取り寄せて、学び方を比べてみる
なるには進学サイトは、大学・短大・専門学校・通信制大学などを学校の種類や分野から探せる進学情報サイトです。気になる学校の資料をまとめて無料で請求でき、オープンキャンパスの情報も確認できます。パンフレットを並べると、学科や専攻の分かれ方、学べる資格の違いが見比べやすくなります。
資料請求無料なるには進学サイトで大学を探す(なるには進学サイトに移動します。掲載校や最新の内容はサイトで確認してください)
よくある相談:文学部の大学院の悩み
文学部の大学院について、よく寄せられる相談を要約して紹介します。どれも、院進を考え始めた人が一度は気になるところですよね。
相談1 文学部で大学院に進学したら、就職できなくなる?
文学部の大学院に進むと就職できなくなるのでは、という相談です。中には「大学以外に就職先がない」と聞いて不安になった、という声もあります。
結論から言うと、修士で就職する人も、博士まで進んで研究職以外の道に進む人もいます。ただ、学部生と同じ時期に同じやり方で就職活動をするわけではないので、準備は必要です。
- 修士で就職するか、博士まで進むかの方向
- 修士の研究と就職活動の時期をどう組むか
- 研究で身につく力を、仕事の言葉でどう説明するか
- 研究室の先輩がどんな進路に進んでいるか
研究室の先輩の進路は、いちばん身近で確かな情報です。先生に相談する時に、あわせて聞いてみてください。
相談2 文学部系の大学院では、何を研究するの?
文学部系の大学院では何を研究するのか、イメージがわかないという相談です。
研究のテーマは、学部の卒論と同じように「自分で立てた問い」です。ある時代の作品の語り方、ある地域の歴史資料、ある思想家の考え方など、対象は分野ごとにさまざまです。
違うのは深さと長さです。修士論文や博士論文では、先行研究を広く読んだうえで、自分の研究がどこを新しく明らかにするのかを書きます。
相談3 文学部で大学院に行ったら、大学教授になるの?
文学部で大学院に進んだら、将来は大学教授になるのか、という相談です。
大学の教員をめざす人にとって、大学院は通る道の一つです。文学部の教授の多くも、大学院で研究を重ねてきました。
ただ、院生の全員が大学教員になるわけではありません。研究の経験を活かして、教員・公務員・出版や資料に関わる仕事など、別の道に進む人もいます。
よくある質問
文学部の大学院と、大学院の文学部は同じものですか?
「大学院の文学部」という言い方を見かけますが、大学院は学部とは別の組織で、文学研究科・人文学研究科などの名前が付いています。文学部の上にある大学院、という意味で使われていることが多いです。
文学部の院進は、自分の大学の大学院でないといけませんか?
そんなことはありません。他大学の大学院を受ける人もいます。ただ、試験の内容や事前相談の仕方は大学院ごとに違うので、早めに募集要項を確かめておきましょう。
京大文学部の大学院には、どんな専攻がありますか?
京都大学の大学院文学研究科には、文献文化学・思想文化学・歴史文化学・行動文化学・現代文化学の各専攻があります(2026年10月時点の公式サイト)。最新の内容は公式サイトで確かめてください。
文学部の博士課程まで進むと、博士号は取れますか?
博士論文を書き上げて審査に通ると博士の学位が授与されます。博士課程に入ったら自動で取れるものではなく、取るまでの期間も分野や研究の進み具合で違います。
文学部の研究室には、学部生のうちから入れますか?
文学部では、3年次からのゼミが研究室の入り口になることが多いです。大学院の研究室の様子を知りたい時は、ゼミの先生に相談してみてください。
まとめ
文学部から大学院へ進む人は少数派ですが、続けたい問いがはっきりしている人にとっては、研究を深められる大事な道です。
時間軸で流れをつかみ、研究室と指導教員を早めに見ておけば、迷いはぐっと小さくなります。
- 人文科学の分類で大学院などへ進学した人の割合は4.6%(学校基本調査からの計算値)
- 院進は学部3年・4年・修士・博士の時間軸で準備を考える
- 研究室選びは、先生の専門と指導の受け方を中心に見る
- 修士で就職するか博士まで進むかで、準備の仕方が変わる
- 迷ったら、続けたい問いを一文にしてから先生に相談する





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